同人活動とは宣伝である〜あるサークルのコミケにおける宣伝の実践と成果について〜

現代の同人誌即売会、とりわけコミックマーケットは、当日に至るまでのウェブでの宣伝活動で勝敗はほぼ決まっていると僕は考えています。10 年前であればアマチュア無線を装備した戦士たちが日ごとに分冊したカタログを片手に高度な情報戦を繰り広げていましたが、それも過去の光景です。戦場はインターネットに移り、現地は答え合わせの場になりました。

そうした状況に鑑みると、ウェブでの宣伝活動は非常に重要です。特に僕のような「ごちうさキャラクターの携帯電話事情を妄想したエロなし漫画」などというニッチでパッと見では理解されにくい類の同人誌を出している人間にはなおのこと。

というわけで、2015 年の冬コミ向けにあれこれ試行錯誤してみた具体例とその成果について、あけっぴろげにしてみようと思います。

Twitter(自分の投稿)

「インターネット=Twitter」みたいな昨今の日本のウェブ事情を考えると Twitter での宣伝は必須と言えるでしょう。手軽で、効果的で、波及力もある。牛丼みたいなやつです。そんな Twitter での宣伝には 2 種類あって、ひとつは定期的に投稿するツイート、もうひとつはユーザータイムラインに固定するためのツイートです。それぞれ具体例を紹介します。

定期型のツイート

定期型のツイートはフォロワー向けのもので、「気付いてもらう」「思い出してもらう」ためのツイートです。

簡潔で、短い文章で、ウザがられない程度の範囲で一日に何回か投稿します。僕はコミケ当日の 3 日前から朝昼晩と 1 日 3 回ずつ投稿しました。リンク先は固定の宣伝ツイートです。具体的には以下のような感じ。

このツイートのアクティビティは以下のとおり。


インプレッション(ユーザーがツイートを見た回数)
1,355
エンゲージメント(ユーザーがRTやLikeなどの反応をした回数)
11

エンゲージメントを率に直すとだいたい 0%~0.8% でした。

複数回投稿することに関しては賛否あるでしょうが、僕自身が「大好きな絵描きのひとが 1 回きりしか告知をしてくれなかったせいで情報をキャッチできず新刊を買い逃す」という経験を何度もしていることから、コミケの情報に限ってはしつこいくらいがちょうどいいと思っています。

だいたいのひとは四六時中タイムラインに張り付いているわけではないし、張り付いていたとしても人間は忘れやすい動物なのでリマインドも大切です。重要なのは「ウザがられない程度」の見極めですが、つまるところ「日頃の行い」に集約されるような気がします。

それと、画像はあった方がいいでしょうが、毎回添付していると media タブが荒れるので /photo/1 を活用した方がいいと思います。同様に mention で固定ツイートを浮上させるやり方も元ツイートに意味のないツイートが連なってみすぼらしいので permalink を投稿する方がいいと思います。まあこのへんはそれぞれの主義に従ってください。

固定型のツイート

固定型のツイートはより詳細なツイートで、定期型のツイートからリンクするほか、ウェブカタログなどの外部サービスから Twitter を探しあててきたひとを出迎えるためのツイートでもあります。すべての情報を網羅し、誰にRTされても大丈夫な渾身の文章を練り上げ、ユーザータイムラインにピン留めしておきます。投稿は一度きりです。具体的には以下のような感じ。

このツイートのアクティビティは以下のとおり。


インプレッション(ユーザーがツイートを見た回数)
2,732
エンゲージメント(ユーザーがRTやLikeなどの反応をした回数)
315

エンゲージメント率は 11.5% でした。

サークルチェックをしていると Twitter アカウントが公開されていて告知も Twitter で行っているのにその告知をピン留めしていないひとが結構いてもったいないなあというか、いちいち該当ツイートを探すのが面倒臭いんじゃ~という気持ちになるので、みなさんもっとピン留め機能を使いましょう。

Twitter(アキバ Blog による支援)

今回は @akibablog さんに支援ツイートをお願いしました。

このツイートのアクティビティは以下のとおり。


インプレッション(ユーザーがツイートを見た回数)
12,873
URLがクリックされた回数
42
RT
21
Like
18

このツイートが投稿されたのは 2015/12/22 21:00 でした。休みの前日の夜、かつコミケ開催一週間前という、もっともサークルチェックされそうなタイミングを狙いましたが、これが正解だったかはよくわかりません。

目に見える効果としては、僕自身のツイートと比べてインプレッションが 5 倍くらいあり、フォロワー数の差が如実に出ています。「とにかく知ってもらう」という目的には一定の効果があったのではないかと思います。他のサークルの支援ツイートを見るとやはりエロ系の RT/Like 数が伸びているので、そっち系のサークルではさらに効果が期待できそうです。

ランディングページ(特設ページ)

どれほど Twitter が優れているとは言えタイムラインは流れていくもの、ホームページなりブログなり Tumblr なりに情報を集約したページを作っておいた方が絶対に良いです。この URL を見れば全部わかりますよ!という明快さは Twitter での宣伝効果をさらに高めます。

今回は自由なレイアウトでやりたいとか、わかりやすい URL にしたいとか、結局ブログも流れていっちゃうよねとかいうのがあってランディングページ(特設ページ)を作ってみました。そのための下準備として 10 月下旬にホームページのリニューアルも行い、過去の同人活動についてもすぐに参照できるようページを整えました。

sunoho.com

ランディングページにはすべての情報を載せるべきだと思っていて、特に僕が重視しているのが頒布価格です。

なぜか同人界隈では頒布価格を事前に知らせたがらない風潮がありますが、一般参加者の目線に立って考えれば 2 番目くらいに重要な情報だと思います。頒布価格を公表せずに「お釣りの出ないようにお願いします❤」とか書かれているとハァ~?という気持ちになるのでなるべく記載するようにしています。

アクセス数としてはアキバ Blog さんの支援ツイートがあった際に平常時の 3 倍くらいになりましたが、その後は平常どおりに戻ってしまっています。極端にバズりでもしない限り、やはり Twitter にくらべてパワーはなさそうということがわかります。

しかしリファラを確認すると某掲示板や某 IRC からの流入があり、ランディングページとして一定の役割は果たせたのではないかと思っています。

ブログ

情報の集約という意味ではすでにランディングページがあり、これ以上ストック型のページを増やしても逆にややこしくなるだけではないかとも考えましたが、ブログ購読者向けに念のためという意味合いでこれまでと同様にブログ記事にしました。ただ、これまでのようにこの URL を宣伝するようなことはしませんでした。

d.hatena.ne.jp

むしろブログに期待していたのは新たな需要の創生でした。

ごちうさキャラクターの携帯電話事情を妄想したエロなし漫画」に興味を持ってもらうためには、「ごちうさキャラクターの携帯電話」に興味を持ってもらわなければならず、ひいては「アニメキャラクターの携帯電話」に興味を持ってもらう必要があり、そのために一年前からコツコツと同じ性癖の人間を増やす活動をしてきました。需要がないなら作ればいいじゃない。

d.hatena.ne.jp
d.hatena.ne.jp
d.hatena.ne.jp

https://anime-mobile.tumblr.com/post/190773066699/%E5%BC%8F%E5%AE%AE%E8%88%9E%E8%8F%9C
anime-mobile.tumblr.com

おかげさまでいずれもホッテントリ入りすることができ、多くの方に読んでいただけたようです。これで少しでもみなさんがアニメキャラクターの携帯電話に興味を持っていただけたのなら本望です。次は僕の本をよろしくお願いします。

Pixiv

Pixiv ではサークルカット、表紙イラストと本文サンプル、おしながきを段階的に公開していきました。

現実としてはできあがったものをできあがった順に公開しただけなのですが、Pixiv と circle.ms を連携させていると Pixiv に投稿するだけで circle.ms のアクティビティが動くので、仮に猛烈なスピードで原稿が仕上がっていたとしても段階的に公開した方がより効果的なのではないかと思います。

www.pixiv.net

このイラストは 2015/12/09 00:13 に投稿しました。アクティビティは以下のとおり。

閲覧数
335
評価回数
3
総合点
30
お気に入り登録
3

www.pixiv.net

このイラストは 2015/12/21 17:00 に投稿しました。アクティビティは以下のとおり。

閲覧数
575
評価回数
7
総合点
70
お気に入り登録
6

www.pixiv.net

このイラストは 2015/12/25 22:37 に投稿しました。アクティビティは以下のとおり。

閲覧数
173
評価回数
1
総合点
10
お気に入り登録
1

僕としても Pixiv への投稿は「フォロワー向けに念のため」という意味合いが強く、宣伝効果はあまり期待していないのですが、イラストを見たいひとがたくさん集まる場に席を置いておくことには意味があると思っています。現に僕がサークルチェックをする際には気になるワードで検索して総当りにチェックしたりということをしているので、潜在的な需要を掘り起こせる可能性を残しておくことには価値があるでしょう。

ウェブカタログ

Twitter やらランディングページやらブログやらがあったとしても最終的に行く着く場所はカタログです。冊子版はどうにもなりませんが、DVD 版とウェブ版のアップデートは絶対に疎かにするべきではありませんし、逆に言えばカタログさえきちんとしていればあとはグダグダでも何とかなるような気がします。

webcatalog.circle.ms

ウェブカタログでやれることは全部やりました。サークルカットはカラー版に差し替えましたし、サークルアピールも申込時のふわっとしたものから確定した内容に書き替えました。告知画像にはチラシとお品書きを登録し、頒布予定には頒布価格までしっかり記載しました。

その甲斐あってか、お気に入り登録数は 56 まで増えました。

もちろんウェブカタログのお気に入り登録数がそのまま頒布数になるとは考えませんが、それでもここの数字が一番正直な数字であることは間違いないです。最終的にはこの数字より少し多めに捌けました。

ディスプレイ

最後にオマケとして現地のディスプレイについて。今回は新たに大判ポスターとあらすじ値札を作ってみました。

大判ポスター

島中のスペースで A1 サイズなどの超大型ポスターを掲示するのはあまり賢明ではない(売り子で隠れる、周りに迷惑、綺麗に掲示できない)と思っているので、卓上に掲示できるギリギリサイズの A2 で作りました。一般参加しているとポスターにスペース番号が書いてあるのはすごく助かるのでスペース番号とサークル名を大きく配置し、あとはとにかくごちうさの本を置いているということをアピールする内容にしました。

ポスターの効果ですが、「あーこれこれ!」と言って寄ってきてくれたひとがいたことと、最後にプレゼント(という形で無理矢理押し付けた)ときにコミュニケーションをとるきっかけになったことの 2 点で僕としては元がとれたなと思いました。金銭的には結構な負担なんですけど、次も絶対にやりたいですね。

あらすじ値札

あらすじ値札、僕が勝手にそう呼んでいるだけなんですけど、こんな感じのものをカードスタンドに入れて掲示していました。

サークルスペースにいると、おそらくみなさんが想像している以上にみなさんの視線がどこを向いているかがわかるんですけど、あらすじ値札は非常に効果があると感じます。そこに見本誌があるのだからそれを立ち読みすればいいと思うのだけど、スペース前にきてあらすじ値札をじっと見るというひとがかなりいました。まあインパクト重視で作っているので僕としてはシメシメという感じです。

まとめ

以上が僕が 2015 年の冬コミのために実践したすべてです。

正直、宣伝に関してはやりきった感があります。これ以上何かやれと言われても、あとはもう誰かに現金を握らせてステをマーするくらいしか思いつきませんし、そんなことをするくらいなら純粋にクオリティを上げて物理で殴る方がよっぽど楽しいです。

結果として、サークルまだへいき!としては過去最速のペースで過去最大の冊数の本が捌け、過去最高に楽しい(ここ超重要)コミケになりました。同人活動って言ってみればオナニーなので、気持よくなったやつが勝ちみたいなところがあって、その点で今回のコミケは完全に勝ったなという感じです。

ひとには向き不向きがあって、宣伝が苦手とか、宣伝するくらいならペーパーの 1 枚でも描きたいとか、いろいろあると思います。でも、知ってもらうことってすごく重要で、同人の本質的な部分でもあると思うんです。同人とは同好の士という意味です。僕は世界にはアニメキャラクターの携帯電話に興味津々というひとが 1,000 人くらいはいてもいいはずだと思っていて、もしもそのひとたち全員にリーチできたとしたら僕の本は 1,000 部捌けるはずなんです。そう考えるとワクワクしませんか。僕はめちゃくちゃワクワクします。知ってもらわなきゃ始まらないんですよ。

というわけで

自家通販やってます(宣伝)。